プラズマ浸炭による無潤滑・水潤滑歯車の開発

 現在潤滑油の使用が困難な歯車装置はたくさんあります.例えば,宇宙基地建設用大形マニピュレーターの関節部分や半導体製造装置など真空中で用いられるもの,私たちの身の回りならばOA・AV機器,事務機器といった人間の居住空間に設置されるために潤滑油による汚染が嫌われるものなどが挙げられます.また,海底資源海開発や洋上風力発電建設を担う水中ロボットなどの海水中の機器、または食品機械、つり具装置、水量計器など,海水もしくは水で潤滑しているものもあります。

 このような油での潤滑が困難な場合では通常,メッキやDLC(Diamond Like Carbon)といった表面処理を行ったり,固体潤滑膜を用いて潤滑したり,またプラスチック製の歯車を用いることもあります.しかしながらこれら従来の選択肢には,密着性に乏しい,軽負荷でしか使用できない,コストが高い,などの欠点がありました.

 そこで本研究では,チタンやSUS系のねじに適用されているプラズマ浸炭という技術に着目し,新しい選択肢としてプラズマ浸炭を用いた歯車を考案しました.プラズマ浸炭には二つの狙いがあります.一つ目は,無潤滑運転に付きものである焼きつき問題の解決.二つ目は,プラズマ浸炭時に表面に析出するとされているガラス状カーボンにより歯車寿命を向上させることです.

 実験では過去の文献をもとに,実際に行われた無潤滑・水潤滑試験と同レベルでプラズマ浸炭歯車の運転を行っています.運転時には,歯形・歯筋の変化や,焼きつきや凝着といった歯面状態,表面粗さ,歯面温度,伝達効率などを計測することで,プラズマ浸炭歯車の運転特性を様々な観点から評価しています.