光造形法に関する研究

研究概要

 今日、さまざまな分野においてマイクロマ シンの実現に期待が寄せられている。
本研究ではマイクロマシンの製作技術として微小立体構造体物の作成に優れている光造形法に注目した。
樹脂内部へ局所的に光を照射して樹脂を硬化させる内部硬化式光造形法を用い、微小樹脂構造物を得る。

光造形法とは?

 光造形法には光を当てることによって硬化する液状の樹脂を用い、作成しようとする構造物の断面の形に光を当て、そ れを順々に積層させることで目的の立体構造物を得る方法である。
光造形法には以下のような区分がある。 さらに、樹脂を硬化させる方法として以下のような区分がある。  本研究では上述の硬化法に加えて、内部硬化式光造形法に注目した。これはレンズで光(紫外光)を樹脂内部に集中させ、樹脂の硬化臨界エネルギーを超える 領域を作ることによって、樹脂内部で硬化させる方法である。
この光造形法には以下の特徴がある。

光造形装置について

造形装置 本研究では左図に示すような一点照射式の内部硬化型光造形装置を用いる。
この光造形装置の特徴は次のようになる。

試作例

SEM写真 SEM写真
スライドガラス上に100μm厚の樹脂を塗布し、上図左側に示すようなハニカム構造を作 成した。
このハニカム構造は84μm x 88μmの長方形の内に、一辺6μmの六角形のセルが39個作成されている。

平面露光型光造形装置について

 一点照射式の光造形装置では一点一点露光することから製作時間がかかるというのが欠点である。時間の短縮を目的と して平面露光型光造形装置の開発を行った。

平面露光型造形装置は樹脂を硬化する部分の光を通すように作ったマスクを使って所望する平面を一括造形できる。しかし、複雑な立体形状を作るにはそのつど マスクを作成せねばならない。そこで、コンピュータからマスクの形状を変更できる可変マスクを考案した。

光ファイバ型光造形装置

光ファイバ型露光装置  左図は光ファイバを可変マスクに用いた光造形装置である。
光ファイバアレイとドットインパクトプリンタのヘッドを利用したシャッタで構成している。
コンピュータでプリンタヘッドのピンを上下に動かすことで出射光を制御する。
これをXYステージ上の樹脂に照射し、分割露光を行うことで目的の構造物を得る。
本研究では1列5本の光ファイバアレイを製作し基本実験を行った。

試作例




樹脂表面と光ファイババとの距離:100μm
硬化高さ:500μm
  1層:300μm
2・3層:100μm
露光時間:2秒
試作物の大きさ:2mm x 2mm



 先の装置を用いて、試作した結果を上に示す。
一点照射式の光造形装置では112分かかったが、製作した光造形装置では58分となり、約2倍の造形時間短縮を実現できた。
さらに多くの光ファイバでアレイを構成すれば、より短い時間での造形が可能と考えられる。

簡易印章作成機を用いた光造形装置

インクリボン型露光装置
 先の光ファイバ用いた造形装置では2次元での硬化は難しい。
そこで、2次元平面を一括硬化させる方法として、簡易印章作成機「たいこバン」を用いた平面露光形光造形装置の開発を行った。
装置の概要を左下図に示す。コンピュータからの操作によってマスクパターンをインクリボンに作成・配置し、マスクパターンからの透過光を下のレンズで縮小 してXYステージ上の樹脂に照射するようになっている。
この造形装置の特徴は、

試作結果

造形イメージ  本研究で用いた簡易印章作成機の熱転写プリンタは64ドット、0.141mm/dotのものである。 マスクの作成には左のように縦64ドットのマトリクスに図形を書き、それを元に作成したデータを熱転写プリンタに送ってインクリボンへ印刷する。




樹脂表面とインクリボンとの距離:200μm
露光時間:2分
硬化高さ:33μm
試作物の大きさ:2mm x 2mm


 このようにして作成したマスクを用いて試作した結果を示す。
一点照射式の光造形装置では112分かかるが、製作した光造形装置では熱転写プリンタで印刷を開始してから露光を終了するまでが12分となり、10倍の時 間短縮を実現できた。