ヘビ型レスキューロボットの開発

研究背景

 阪神・淡路大震災をはじめとする、大規模災害が発生した場合、災害現場が広範囲にわたり多数発生し、倒壊家屋に閉じ込められるなどで救助を要する人(要救助者)も多数にのぼる。しかし交通や通信網も分断されるため、各現場でのレスキュー活動が主となる。
 ここで、レスキューロボットを用い要救助者の位置や周辺状況を把握できれば、各現場でのレスキュー活動がよりスムーズに行われ、災害現場全体の要救助者の発見率を上げることが可能となる。
 本研究室では要救助者の捜索を目的とする、ヘビ型と球型のレスキューロボットの開発を行っている。

概要

 本研究では、倒壊した建物の中といった狭い場所にも進入が可能なヘビやミミズをもととした細長い形状で柔軟な動きのできる多自由度駆動のレスキューロボットの開発を目的とする。
多自由度駆動機構を用いたロボットとしては
  1. 腱駆動型
  2. 複数のアクチュエータを使用する方法
  3. 特殊な歯車や機構を使用する方法
  4. 空気圧を利用する方法
が挙げられる。
本研究では少ないアクチュエータでロボットを駆動する省アクチュエータ機構を提案し、このロボットに搭載する関節機構の試作を行った。

少ないアクチュエータでレスキュー活動は可能か?

上記のような省アクチュエータ駆動を実現した場合、レスキュー活動を行えるかどうか検討を行ってみる。

くねり推進ヘビ型ロボットがくねり前進を行うには、複数のアクチュエータを用いて複数の関節を同時に駆動させる必要がある(左上図)。
移動 探索活動や狭い場所を移動するには、単位関節ごとに屈曲や伸縮をすることで移動が可能である(中図および下図)。
探索 アクチュエータの動力を各関節に伝達し、単位関節ごとに動作させれば、少ないアクチュエータでヘビ型ロボットの駆動が可能である。

提案するロボットの構成

提案するロボットの構成

ロボットの概念図

試作したロボットについて

試作ロボット 省アクチュエータを実現するため、関節部に左写真のような姿勢変化機構を考案し、試作した。
アクチュエータ部からベルトによって伝達された動力はクラッチのON・OFFで制御され、クラッチがONのとき直動部が上下に動作する。試作した機構には直動部が4つあり、写真の前後・左右方向への屈曲と上下方向への伸縮を可能にしている。

試作ロボット 現在試作しているロボットを左図に示す。
全長1000mm、直径200mm、重量15kgである。センサーヘッド、アクチュエータ部、走行部、伸縮部の4つで構成されている。
センサーヘッド部には瓦礫内の状況を確認するCCDカメラ、被災者の発見・および位置同定に使用する各種センサを備える予定である。
走行部には自走するための車輪と車輪の出し入れをさせるためにクラッチを取り付けている。
伸縮部は屈曲および伸縮の3自由度を有し不整地ではくねりや蠕動運動による移動が可能である。

現在の開発状況

少数のアクチュエータで索状ロボットを駆動する省アクチュエータ駆動を提案した。

蛇型ロボットの関節部の基本単位の試作・動作実験を行った。
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ベルトのすべりにより、設計上の動作は得られなかった。
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省アクチュエータの駆動方法を同一に、動力の伝達効率を上げるために機構の変更を行った。
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設計を終え、試作ロボットが完成した。
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関節部の屈曲と伸縮運動(3自由度)が実現できた。
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多段に積み重ねることで、多自由度を有する索状ロボット実現の可能性を確認した。